他人事ではない、“骨折リスク”
骨粗鬆症とは、どのような病気なのでしょうか?
骨粗鬆症の人はいま、増えているのでしょうか?
中村幸男先生
はい、増え続けています。
特に、骨粗鬆症に伴う骨折は深刻な問題です。寝たきりの主な原因となる大腿骨頸部(脚の付け根)骨折は皆さんもよくご存じだと思います。
日本で行われた3年間の追跡調査によれば、骨粗鬆症に合併した大腿骨頸部骨折の発生数は、1年あたり女性では約120万人とされています(1)。また別の調査では、40才以上で大腿骨頸部の骨密度が低い女性は、男性の約5倍と報告されています(2)。女性は、骨粗鬆症を原因とした大腿骨頸部骨折を発生することが多い、ということですから、骨粗鬆症の予防と対策をきちんと行えば、大腿骨頸部骨折の発生を防ぐことができるのです。
また、意外に思われるかもしれませんが、実は20~30歳代の若い方でも骨粗鬆症を発症する可能性がありますので注意が必要です。特に女性は、若い世代から骨粗鬆症に対する予防意識を持ってもらいたいです。
(1)Yoshimura N, et al. Serum levels of 25-hydroxyvitamin D and the occurrence of musculoskeletal diseases: a 3-year follow-up to the road study. Osteoporos Int. 2015 Jan;26(1):151-61.
(2)Yoshimura N, et al. Cohort profile: research on Osteoarthritis/Osteoporosis Against Disability study. Int J Epidemiol. 2010 Aug;39(4):988-95.
中村幸男先生 骨粗鬆症とは、「骨密度の低下」および「骨質の劣化」によって、骨の強度が低下し、骨が脆(もろ)くなり、骨折しやすくなる状態を指します。
骨粗鬆症=骨折(骨粗鬆症になると骨折する)というイメージを持たれている方が多いと思いますが、必ずしもそうではありません。骨粗鬆症には、まだ骨折していなくても「骨折リスクが高くなっている状態」も含みます。骨粗鬆症は、早期発見し適切な治療を行えば、骨密度など正常に近い状態まで回復できる可能性が高い病態、と考えています。