摂る?摂らない?
知っておきたい「糖質」とのつき合い方

摂る?摂らない?知っておきたい「糖質」とのつき合い方

ご飯やパスタなど、糖質を含むものを控える糖質制限といわれる食事法。しかし、糖質は三大栄養素のひとつで、生命維持になくてはならないもの。糖質とどのようにつき合えばいいのか、下北沢病院 糖尿病センター センター長の富田益臣先生にお尋ねしました。
(出典:太陽笑顔 fufufu)

doctor
お話を伺った先生

富田益臣先生
下北沢病院 糖尿病センター
センター長

東京慈恵会医科大学卒業。その後、東京都済生会中央病院 糖尿病・内分泌内科に勤務。特に糖尿病・生活習慣病に起因する足の治療に従事し、現在に至る。

「糖質」のはたらきとは?

そもそも糖質とは、私たちの身体の中でどんな働きをしているのでしょう?

富田益臣先生 “糖質は肥満の原因だと思われているかもしれませんが、決して不要なものではありません。私たちが生きるために不可欠な三大栄養素のひとつです。糖質、脂質、タンパク質はそれぞれ働きが異なり、脂質は主に細胞膜を作り、タンパク質は身体の主な構成成分になります。糖質はというと、主に脳や赤血球、筋肉、神経系のエネルギー源になります。脳と身体を働かせるための必須の栄養素。いわば自動車を走らせるための、ガソリンのようなものです。”

糖質を摂り過ぎると、どんな問題があるのでしょうか。

富田益臣先生 “エネルギーとして使われず余ったブドウ糖は、グリコーゲンとしてまず肝臓と筋肉に貯蔵されます。これはヒトが長く飢餓にさらされてきたことで獲得した仕組み。食べ物を得られなかったとき、エネルギーを供給するために、肝臓や筋肉にあるグリコーゲンを再びブドウ糖に分解して補います。” “肝臓や筋肉に貯蔵しても、それでも余った糖は、体脂肪として蓄えられます。現代は食べるものが豊富にあり、飢餓状態になることはほぼありませんから、余った糖がどんどん体脂肪となって肥満になってしまうのです。” “肥満が原因で、糖尿病のリスクが高まることも問題。糖質の摂取量は減少しても、糖尿病は年々増加しています。糖質だけが原因とは言えませんが、大きく関係しているのは事実です。”

では、逆に糖質が不足すると、どんな問題があるのでしょうか。

富田益臣先生 “糖質は小腸で吸収されてブドウ糖になり、血流によって身体のすみずみまで運ばれ、エネルギーとして利用されます。脂質やタンパク質もエネルギーになりますが、素早く、効率的にエネルギーになるのが糖質。ヒトが活動をするときには、糖質がエネルギーとして、真っ先に消費されます。” “脳は1時間に5gものブドウ糖を消費します。脳のエネルギーを作ることができるのは糖質だけ。脂質やタンパク質からは作れないのです。” “肥満は万病のもとですから減量のために、短期間の糖質制限は有効だと言えます。しかし、長期間続けた場合のデータはなく、安全かどうか何とも言えません。糖質制限のメリットとデメリット、そして本当に必要なのかも考えるべきだと思います。”

血糖値を急上昇させない食生活を

糖が体内に余ってしまうと、何が起こるのでしょうか。

富田益臣先生 “糖が余ると、肥満になるだけでなく、糖尿病にもつながります。そもそも血糖値とは、血液中にあるブドウ糖の濃度のことで、糖質を含む食事をすると上昇します。これはごく自然なこと。通常、食事によって血糖値が上がると、すい臓から分泌されたインスリンの働きで全身の臓器に糖がとり込まれ、エネルギーとして利用されたり、蓄えられたりします。こうして、食後に増加した血液中の糖はインスリンによって速やかに処理され、血糖値は一定に保たれるわけです。ただ、このインスリンの分泌が少なくなったり、働きが悪くなると、正常に血糖を処理できなくなってしまいます。そうして糖がいつまでも血液中に余った状態が糖尿病です。”

では、糖分の過剰摂取が原因で太っている人だけが糖尿病になりやすいのでしょうか。

富田益臣先生 “糖尿病は、肥満の人がなる病気だと思われていますが、日本人を含むアジア人においては、そうとは言えません。痩せている人にも糖尿病が多いのです。これは、もともとアジア人のインスリン分泌能力が低いため。血糖値が急激に上がるような食べ方をすると、インスリンの分泌が間に合わず血液中に糖があふれやすくなるのです。しかも、その食べ方を続けると、すい臓が疲弊して、ますます分泌能力を低下させてしまうことにもなります。”

血糖値を上げないためには、どんなことに気をつければいいですか。

富田益臣先生 “速やかにエネルギーになるブドウ糖を含む単糖類は、血糖値を上げやすく、消化・吸収に時間がかかる多糖類は血糖値の上がり方がゆるやかになります。多糖類であるデンプンを含む、米や芋類はカロリーが高く、血糖値を急上昇させるのでは?と思われるかもしれませんが、カロリーと血糖値はあまり関係がありません。スイーツを食べた分、ご飯を減らすという人もいますが、血糖値のことから考えるといいこととは言えません。糖質をただ控えるのではなく、どの糖質をどう摂るかも考えるべきです。消化・吸収のいい砂糖などの単糖類はできるだけ控え、血糖値の上昇がゆるやかな多糖類から摂ることが望ましいです。”


最後にメッセージをお願いします。

富田益臣先生 “何をどう食べるか、それを考える上で、血糖値を正しく知っておくことはとても大切。健康診断などで調べられる空腹時血糖値、HbA1c(過去1~2か月間の血糖値の平均)と合わせて、〝第3の数値〟とも言われる、食後血糖値も重要であるとわかってきました。この食後血糖値が高い人(下のグラフ参照)が、糖尿病予備軍と言われる人で、年々増加しています。健康診断には含まれていない項目ですので、気づかれにくいのが問題。ただ、今は食後血糖値は、多くの医療機関で調べられますし、家庭で調べられるサービスなどもあります。糖質とのつき合い方を考えるためにも、真の健康を目指すためにも、食後血糖値を測定するといいでしょう。”


「糖質は肥満のもと」と単純に思い込んでいましたが、大切なはたらきを持つ栄養素であり、大事なのはその摂り方なのだと初めて知りました。また、同じ炭水化物でも種類によって血糖値の上がり方が異なるのですね。糖質と賢くつき合って、健康づくりに役立てたいと思いました。富田先生、ありがとうございました!

Summary
この記事のまとめ

  • 糖質は、私たちが活動するための大切なエネルギー源。
  • 問題は体内で余った糖質が、体脂肪として蓄えられること。
  • 血糖値が急上昇するような食べ方に注意して、糖尿病のリスクを回避。

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