お母さんの食事が、子どもの将来の健康になぜ大きな影響を及ぼすのか?理由の解明につながる研究が、進んでいます。妊娠している方のみならず、妊娠前・若年世代から考えて欲しい「妊婦期の栄養摂取と胎児成長」について、浜松医科大学付属病院周産母子センター伊東宏晃先生にお話しをお伺いしました。
doctor
お話を伺った先生
伊東宏晃先生
国立大学法人浜松医科大学周産期母子センター
センター長、病院教授
昭和61、京都大学医学部医学科卒業後、同年京都大学医学部附属病院入局。 国立姫路病院、 ウイスコンシン州立大学マジソン校医学部産婦人科、独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センターなどを経て現在に至る。日本産科婦人科学会 (代議員)、日本周産期・新生児医学会(評議員)、日本DOHaD研究会(幹事)に所属、浜松市母子保健推進会議会長なども務める。第2回ロート女性健康科学研究助成受賞。
足りてない?妊婦の栄養状態の現状
まずは、「妊娠」すると注意しなければいけない栄養管理のポイントを教えてください。
なるほど、妊娠前よりしっかり食べていかねばならないのですね。では、現在の妊婦の栄養状況はどうですか?
なぜ、「足りていない」方が多いのでしょうか?
伊東宏晃先生
ダイエット志向、痩せへの憧れによる、「食事制限」「低カロリー」を意識した食習慣が影響していると考えています。研究の結果では、「摂取カロリー」不足だけでなく、炭水化物・脂質・タンパク質、その他の栄養のバランスも、妊娠前と変化がありませんでした。このことから、妊娠をしてもそれまでの食習慣を継続している方が多いことがわかります。結果、エネルギーの必要な妊娠期であるにも関わらず、摂取カロリーを増やすどころか足りない、という状態になっていると予想しています。つまり、妊娠する前から、食習慣や栄養面に注意しておかないと、妊娠してからのカロリー摂取不足(低栄養)へのリスクにもつながる可能性があるのです。
母体の低栄養に潜む、胎児の健康リスク
母親の低栄養は、子どもにどのような影響を与えるのですか?
妊娠前の食事も、生まれる子どもの健康に影響があるのはなぜでしょうか?
伊東宏晃先生
私たちの研究で、子どもの「出生体重」との正の相関が認められたのが、「妊娠前の体重」でした。
つまり、妊娠前にやせていると、胎児の発育に影響する可能性があると考えられます。
ダイエットのために食事制限をしていたり、朝ごはんを抜いたりしていないでしょうか?子どもの将来の健康を考え、妊娠前からカラダ作りが始まっていることをぜひ考えてみてください。
これから妊娠を考える女性にむけて、アドバイスをお願いします。
妊娠前の母親の食生活が将来生まれてくる子どもの健康に影響するとは驚きでした。健康のためにと言って、カロリーを摂り過ぎないことばかり意識していました。これからは、子どものカラダ作りも意識して今日から食生活を見直していきたいと思います。伊東先生ありがとうございました。
Summary
この記事のまとめ
- 実は若年女性はエネルギー不足!?
- 妊娠したら”食べる”ことも意識しよう
- 子どものために、身体作りは妊娠前から
この研究は、第2回ロート女性健康科学研究助成を受賞しました。より詳しい内容はこちらへ
伊東宏晃先生 妊娠中は、適切な食事がとても重要な時期です。 厚労省の栄養摂取基準2015では、妊娠前の女性(18~29才)の1日に必要な摂取カロリーは1950キロカロリーで、妊娠中は時期によってエネルギー摂取量をさらに増やしていく必要があると定められています。(図1)