『睡眠』は、からだの回復にとても大切なことですが、実はいま、不眠に悩んでいる女性が増えていると言われています。なぜ睡眠に問題を抱える女性が多いのか？日々の生活の中に取り入れられる解決方法とは？疲れと睡眠との関係を専門にご研究されている、福田早苗先生にお話しを伺いました。
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お話を伺った先生
福田早苗先生
関西福祉科学大学健康福祉学部
健康科学科 教授
大阪大学人間科学部卒業後、大阪大学大学院医学研究科に進学し修士（医科学）・博士（医学）を取得。その後、ドイツ連邦共和国ドレスデン工科大学客員研究員、科学技術振興機構（ＪＳＴ）研究員、大阪市立大学大学院医学研究科特任講師、理化学研究所上級研究員を経て現職。専門は予防医学、健康科学で、疲労・ストレスに関する様々な研究に従事。
福田早苗先生 これには女性ならではのワークライフバランスが関係していると考えています。深夜も気を遣う「介護」や「育児」の主な担い手であること、日中に身体を休められない「ワーキングマザー」が増加していることなどの社会背景が、女性のメンタルヘルスに大きな影響を与えています。
福田早苗先生 一般的に睡眠問題の原因となる習慣として、「運動不足」と「ストレス」が考えられており、これらを解消することが大切と考えられています。さらに、私たちの研究で、睡眠状態の悪い人は「疲労」を感じていること、さらに疲労を感じやすい人は「食生活に問題が多い」ことが分かりました。つまり、「疲れをとる食生活」が大切なんです。
福田早苗先生
はい、そうです。
眠れないと感じたら、疲れをとる食事を意識することがとても大切です。「疲れ」によい食べ物については、実はとても良く研究されています。
良く知られている栄養素はビタミンB群。豚肉や豆類、卵、納豆などに多く含まれています。また、「イミダゾールジペプチド」や「クエン酸」、「コエンザイムQ10」などの成分も疲れを取るのに効果的です（図3参照）。具体的な食べ物では鶏胸肉、まぐろ、のり、さやえんどう、しいたけ、牛乳、アボガド、グレープフルーツなどに多く含まれています。
福田早苗先生 取り入れ方のポイントとしては4つあります（図4参照）。 まずは、疲れを取る食べ物（野菜、豆類、海藻類）を積極的に食事に取り入れましょう。今はサプリメントも多くありますが、身体の働きを考えた上で最も効率が良いのは、食事から摂取することだと思います。 次に、「食べる時間」や「バランス」も意識してください。例えば一日三食、できるだけ同じ時間に食べることが大切です。
福田早苗先生 食生活を変えるきっかけになるのは、まず「食事を楽しむ」こと。食事は一時的に気を付けるのではなく継続することで効果が出てきます。 私たちの研究で、8週間の食事改善プログラムを行いましたが、管理栄養士やメールでの声がけがとても大切だということも分かりました。自分だけで気を付けるよりも、誰かと一緒に会話をしながら楽しむことが、食生活の改善を定着させるためのポイントになるからといえます。 例えば家族であれば、家族揃って食事を食べたり、一緒に何か料理を作ってみたりすることで、食べものへの関心を持つことに繋がります。まずは気負わず、食事を楽しむことから始めてみるのが良いでしょう。
福田早苗先生 食生活を変えることは、分かっていながらもなかなか始められないと思っている方が多いのではないでしょうか。変えないといけないと思うのではなく、まずは家族や友人と食事を楽しむこと、お子さんと一緒に食事を作ってみること、たまにパートナーと外食をしてみるなど、出来ることから変えていこう！くらいの気持ちで、楽しくスタートしてみてくださいね。
楽しい食事が、睡眠トラブルを解決できるというアプローチは、とても驚きでした。悩みを放置したり、一生懸命寝ようと考えるだけではなく、日頃の食生活に目を向けることから始めてみたいと思います。人との繋がりなど他の面でも様々な変化があるかもしれませんね。福田先生、ありがとうございました。
この研究は、第３回ロート女性健康科学研究助成を受賞しました。より詳しい内容はこちらへ
福田早苗先生 まず、日本人全体の約2割、実に5人に1人が睡眠にトラブルを感じていることが分かっています。男女比をみると男性よりも女性が多く、（図1グラフ参照）平成19年に行われた厚生労働省の国民健康・栄養調査でも、女性の方が男性に比べると睡眠トラブルを感じている割合が高いことが明らかになりました。 症状としては、寝付くまでに時間がかかる「入眠困難」、睡眠途中に起きてしまう「中途覚醒」、睡眠の質低下などが多くみられます（図2グラフ参照）。