高脂肪食に潜む危険
高脂肪食はどのような食べ物でしょうか?また、どんな点が問題なのでしょうか?
小塚智沙代先生 高脂肪食とは、イメージ通り脂肪分の多い食べ物、ポテトチップ、ケーキなどのこと。「不健康」なイメージがあると思いますが、高脂肪食が完全な悪者とは思ってはいません。問題なのは、日常的にこのような食品を摂りすぎてしまい、炭水化物・脂質・タンパク質などのバランスが悪い状態になること。近年、誰もが24時間安価に、脂肪分の多い食べ物を取る機会が増えたという点は、注意しなければいけません。
高脂肪食を「日常的にとり過ぎてしまう」と、身体にどのような影響がでるのでしょうか?
「つい手が止まらず食べすぎた!」という経験、私もあります。なぜ食べすぎてしまうのでしょうか?
小塚智沙代先生
高脂肪食は、「報酬系」という脳の機能に強く作用し、依存状態に陥りやすい食べ物だからです。
「報酬系」は、食べ物を食べると嬉しいと感じ、必要な量を食べると満足するという機能。ヒトを含め、すべての動物に備わっています。しかし、同じ刺激ではこの「報酬系」が反応せず、満足できなくなってしまいます。これを「依存状態」と言います。
「食べ過ぎてしまう」という行動は、すでに同じ量の高脂肪食を食べても脳が期待したほどの満足感が得られにくくなっていて、脳がもっとほしいと訴えているのです。依存状態に陥りやすいと言われる、煙草に含まれるニコチンや麻薬のコカインなども、この「報酬系」に強く作用し、日常では得られない満足感をもたらします。
なるほど、高脂肪食は「もっと食べたい」という悪循環に陥りやすい食べ物ということですね。
小塚智沙代先生
はいそうです。
しかし、麻薬のように急速に強い依存状態を作るわけではないことも過去の研究結果からわかっています。高脂肪食は、長期間かけて徐々に依存状態を作っていきます。つまり、食べることが悪いのではなく、食べ続けないことが大切なのです。気づいたときに「このまま食べ続けていてはダメだな」「食べ過ぎないようにしよう」と自分の食生活を振り返ってみることが大切です。
「食生活を見直す」ことは、なかなかむずかしいという方も多いと思います。どんな点に注意したらよいのでしょうか?
小塚智沙代先生
そうですね。「食欲」は生きるために不可欠な三大欲求の一つ。むずかしいのもわかります。
私自身も食べることが大好きなので、できる限り我慢せず食生活を改善していきたいという思いから、「食行動と高脂肪食」の研究を進めてきました。研究を進めていくにつれ、玄米のγ(ガンマ)-オリザノールという成分が、高脂肪食に対する過剰な食欲を抑えることが分かりました。日々の食生活に、簡単に取り入れられる食材として、非常に注目しています。
小塚智沙代先生 肥満や糖尿病など、贅沢病と言われる生活習慣病のリスクはもちろんですが、実は、「依存性」の高い食べ物ということも大きな問題です。つまり、食べ続けると「もっと食べたくなる」ということ。高脂肪食を思い浮かべると、何故かまた欲しくなる、一口でやめようと思っていたのにたくさん食べてしまう、というす食べ物が多いのではないかと思います。